概要

ナンと感慨

ナンは、インド、パキスタン、中央アジアのタジキスタン、中国新疆ウイグル自治区、ウズベキスタン、アフガニスタン、イラン、クルディスタンなどで食べられるパンである。

自然種(小麦などに含まれる野生酵母菌を自然発酵させた種)で発酵させた生地を、へら型にのばしてタンドゥールと呼ばれる窯の内壁に貼り付けて焼いたもの。精製した小麦粉を使う。日本ではインド料理店などでカレーを食べる際に提供される事が多い。最近ではファミリーレストランや学校給食、カレー専門店の中にもナンを提供する店が多くなった。このため、インド風のナンを焼くために小麦粉などを調整したナンミックスや業務用の冷凍食品も流通している。スーパーマーケットでも家庭用に焼いたものや、冷凍食品が売られている場合も多い。

ウルドゥー語で「ナン」という。ロティの一種。インドのナンと同じようにタンドゥールの中で焼き、焼きたてはふんわりしているが、形は丸いものが多く、草履型のものもある。カレーを付けたり、すくったりしながら手で食べることが多い。

中国新疆ウイグル自治区などに住むウイグル人はナン(nan)、中国語「饢/馕」(拼音: náng ナン)を主食のひとつとして食べている。焼いて作るパンの総称であるが、生地を円盤状にのばし、ゲズネ(gezne)と呼ばれる板を使ってトヌル(tonur)と呼ばれるかまどの内側に貼り付けて焼くものが多い。インドやパキスタンのものと異なり、1cm程度の厚みがあり、しっかりした硬い焼きあがりである。家庭の食卓の上に常時保管され、基本的に茶やスープと共に食べる。硬くなりやすいため、割ってからこれらに漬けて食べることも多い。ウイグルのナンは中国各地の大都市のウイグル料理店や露天商が作って売っており、漢民族や回族などにも消費されている。このためナンを表す漢字「馕」がある。

ナンとパン作り

ナンは小麦粉を主原料とする上ではパン作りと一緒と言えるが、その製法は大きく異る部分が多い。パンを焼く場合に発酵を繰り返す作業はナンではそれほど必要としない。また、釜で焼く場合にもパンは通常はそのまま焼いて気泡を作りながらふっくらと仕上げたり、型に入れてその型通りに焼くことが多いのだが、ナンに限って言えば平たく伸ばした生地を釜に直接貼り付けて焼きあげる。そのため表面はフワフワとしているが、焼き面はこんがりと焼き上がる。それがナン独特の触感を生み出しているのである。このようなパン作りに関する情報も、一昔前までは専門誌などで得ていたものだが、今はインターネットやブログなどでいくらでも知ることができるようになってきた。


since2010 © Hima×Zineについて